PioneerDJが去年公開したドキュメンタリー映像「INSTA DJ」の日本語訳が公開されました。いろいろ考えされられる内容でした。今回はその映像の中にある言葉を通してこのことについて考えてみたいと思います。
3つのテーマで構成されたドキュメンタリー
- SNSがDJやダンスミュージックシーンにどのように関係して、どのように影響を与えているか?
- SNSは膨大なフォロワーがいなくても成功することができるのか?
- SNSがDJやダンスミュージックシーンに関わる人達のメンタルにどのように影響を与えているか?
という3つのテーマで構成されています。ダンスミュージックシーンに関係する人たちだけでなく、メンタルヘルス関係の方のインタビューもあり、多方向からSNSとクラブシーンの関係を切り取っています。Carl Cox、Annie Mac、Danny Howard、Claude VonStrokeなどのDJや、音楽関係者やSNSの研究者などが語る内容となっています。
また人気DJのDanny Howarが1週間SNSを断舎離する場面もあり、どのようにSNSと向き合っていったらよいかを考えさせられる映像となっています。
それでは動画をてみよう
字幕設定から日本語を選択すると、日本語字幕で見れます。43分ほどの映像です。
SNSがどのような影響を持っているのか?
動画中で語られていた内容をまとめてみました。
ポジティブな影響
- ベッドルームで作った曲が世界中でステージのハイライトを飾る力を持っている
- フィードバックを世界中から集めるには最強のツール
- ファンやフォロワーと触れ合うことができる
- 自分のプロモーションに不可欠なツール
- プロデューサーにとってSNSは何億円もする顧客管理システムみたいなもの、顧客との関係を築いて反応をすぐに得ることができる
- アーティストの人間らしい部分を感じることができる
- DJと消費者の間に直接繋がりをつくる
- どの曲が好きでどの曲がそうじゃないか正確に調べることができる
- アーティストとファンが直接話すことができる。何かを仲介させる必要がないからファンを満足させられる
- ファンが自分の発言を広めキャリアを伸ばしてくれる
- インスピレーションにもなるし教育にもなる
- SNSは古い社会構造を解体すると思う
- SNSを通じて爆発的な人気を得た人もいる
ネガティブな影響
- 自分がそこにいてDJも見えているのに画面越しに見ている奇妙な現象が起こっている
- DJのメンタルヘルスに致命的な害を与える可能性がある
- 人の弱みに付け込み始めている。多くの人に間違った動機付けをする
- 虚構の自分を作り出し仮面をかぶった人格を演じてそれを思うままに広げてしまっている
- DJをやっていて集中できないと感じる。物理的に邪魔される
- スマホを掲げている間は誰も曲を聴いていない
- フォロワーがたくさんいるがコメントが少ない様を見ると現実なのかわからないのが良くないところ
- 常に批判にさらされている
- 良い感じで自撮りされたい気持ちはプレイをしている最中だということ忘れさせてしまい、葛藤が生まれる
物事には必ず裏表があるといいます。良い面もあれば悪い面もあります。このバランスのとり方を問われていく時代なのかなと思いました。
一見ネガティブな影響だとしても工夫次第でポジティブな影響に変わる可能性もあります。もちろんその逆もしかりです。
ファンやフォロワーと直接繋がれるようになった反面、今まで以上に気を使わねければならなくなりました。角度を変えてみてみると一長一短ですね。
SNSは膨大なフォロワーがいなくても成功することができるのか?
SNSによって、今までにはない売り込み方やブレイクも起こりました。それらについてのコメントはこんな感じです。
- (スカウトする側が)新人発掘する時、彼らのSNSを見て判断している
- プロデューサーにとってSNSは何億もする顧客管理システムみたいなもの、顧客との関係を築いて反応をすぐに得られる
- 音楽をプロモーションするのと同じように自分自身をプロモーションする必要がある
- 上手なプロモーションは仕事と人間らしさをミックスするバランス
- エージェントはフォロワーの多いDJをブッキングしたがる
- いいねを買っている人もいるがそれもまたプロモーション
- ベッドルームで作った曲が世界中でステージのハイライトを飾る力を持っている
アーティストの価値とフォロワー数がイコールではないものの、エージェントやイベント関係者からは判断基準のひとつとして使われているようです。
またSNSの普及によって自分をプロモートする必要性も出てきました。SNSを通じて人気を得ようとするならば良い音楽を作るだけでは通用しなくなったとも言います。
SNSがメンタルヘルスにどのような影響を与えているか?
成功した人でも自分は評価されるに値しないと自己を過小評価してしまう「インポスター症候群」に陥る可能性などについても触れらていています。
また、アーロンバリック博士が行った調査によれば、「もし絶えず写真を撮るようになると自分の経験と写真を繋げることに依存する」と述べ、イベントに行けばステージをスマホ越しに見るようになり、脳の一部がここにいる必要はないと認識するようになるそうです。後でも見られるしその瞬間に没頭しなくなるからだそうです。
せっかくその時その場でしか体験できないことのために足を運んでいるのに、ここにいる必要はないと思ってしまうのは寂しい限りですね。
物事には記録できないものがある
自分が感じ取り自分の中に消化したものは記録として残せないと述べています。感動や驚き、新たな出会いや新鮮な気持ちは記録にできません。残せないからこそ価値があるのがLiveというものだと思います。
一期一会の出会いは残せないから貴重であり、その体験があるからこそ次に出会うものも大切にするのではないかと思います。
色々考えさせられる内容でした。日本語字幕で見れますのでぜひ一度見てみてください。
それでは!
À bientôt.