普段何気なく聞こえている「音」にはいくつかの要素が組み合わさっています。今回はその仕組みについて書いてみたいと思います。
二元論とは?
物事の根本的な原理として、背反する二つの原理や要素から構成される、または2つからなる区分に分けられるとする概念のことです。
上と下、善と悪、右と左など五感で感じるもののほとんど(すべて?)が背反するもので構成されています。
音もまた同じで、思いつく限り次の表の要素で構成されています。
太い | 細い |
温かい | 冷たい |
硬い | 柔らかい |
抜ける | 籠もる |
遠い | 近い |
歪む | 澄む |
大きい | 小さい |
高い | 低い |
激しい | 優しい |
乾いた | 湿った |
重い | 軽い |
強い | 弱い |
聞こえている音を二元論で分析してみよう
耳にしている音もすべて二元論で分けて言語化することができます。いくつかの例をもとに、聞こえている音がどのように構成されているかを見ていきましょう。
外を走る救急車の音
- 遠い or 近い(距離)
- 大きい or 小さい(音量)
- 高い or 低い(音程)
これらの要素はすべて距離によって変化してきます。遠いときは音量は小さく、近づけば音量は大きくなります。また、ドップラー効果によって音程も変化します。通り過ぎた瞬間に低くなったように聞こえるのは体験したことがあると思います。
セミの声
- 遠い or 近い(距離)
- 大きい or 小さい(音量)
- 高い or 低い(音程)
- 硬い or 柔らかい(音質)
距離と音量は救急車と同じ原理ですね。音程と音質は距離に関係なく、鳴き方・種類・個体差によって変化します。
電話、相手の話し声
- 遠い or 近い(距離)
- 大きい or 小さい(音量)
- 高い or 低い(音程)
- 硬い or 柔らかい(音質)
- 歪む or 澄む(音質)
例えば「ちょっと聞こえにくいんだけど?」というシチュエーションでは「遠い」「小さい」「歪む」が組み合わさっています。
物事を観察する時に二元論で見るクセをつける
特に音楽制作をしている時、コミュニケーションの中で二元論を用いると良いと思います。例えばミックスダウンの時に「歌もっと前に出してくれるかな?」という会話をすることがよくあります。「前に出す」とは「抜ける」とも言いますが、それらは以下のどれかを調整することで対応できます。
- 音量(上げる)
- 距離(近づける=リバーブ、コンプを調整する)
- 距離(乾かす=リバーブを減らす)
- 音質(少し硬くする)
エンジニアに聞いたらもっと他の方法があるかもしれません。このように二元論で見てみると、専門的な知識がなくてもどの要素を調整すれば良いかがわかってきます。
何をどの程度調整するか?が個性となってくるのではないかと思います。いわゆる職人技というものは二元論を元に、どれをどの程度「足す or 引く」かを長年の経験から調整しているのだと思います。
自分のスキルなどを上げたいと思った時は、目標となる人のスキルを二元論で見てみるとヒントがあるかもしれません。
それでは!
À bientôt.