表現方法が良い/悪いの話をするつもりはありません。そんなことより大事なのが、相手が言っている言葉のニュアンスと、自分が認識しているニュアンスが本当に同じなのかを確かめた方が良いという話をしてみたいと思います。なぜかというと、そこには大きなズレがある可能性があるからです。
同じ言葉でも環境が違えば意味も変わってくる
よく発注で「カッコ良い感じに」とか「ノリがある感じで」などという言葉が使われることがあります。他にもドラマやアニメなどでは「悲しい」とか「切ない」「温かい」などもよく使われます。「懐かしい感じ」や「青春っぽい感じ」とかも聞く言葉です。
「ノリがある感じ」を例に取ってみましょう。相手がR&Bとかファンクなどのブラックミュージックが好きだとしましょう。そして僕がダンスミュージックが好きだとします。ブラックミュージックの「ノリ」とダンスミュージックの「ノリ」の違いは何でしょう?
ブラックミュージックでは、レイドバックした16分のノリもあれば、リズム隊が醸し出す「揺れ」をノリと表現することがあります。
対してダンスミュージック(例えばテクノ)では、クオンタイズされた「揺れのないビート」や「TR-909の裏打ちハイハット」などでノリを感じるジャンルです。
このように、「ジャンル」という環境の違いでノリの捉え方は大きく変わってきます。もしクライアントさんがブラックミュージック好きでノリのことを言ってきたとして、テクノ好きの僕が「テクノのノリ」アプローチをしても刺さらないのではないかと思います。刺さらないどころか「いや、そうじゃなくて」となると思います。
このように相手の好みなどによって、同じ「ノリ」という言葉も捉え方が変わってくることがわかります。
育ってきた環境で言葉の捉え方が変わる
「懐かしさ」を例に取ってみましょう。僕は群馬県の田んぼがある風景の中で育ちました。めちゃくちゃ田舎ではありませんが、庭には柿の木がありましたし、田んぼや畑に囲まれ泥遊びなどをして育ったクチです。神社やお寺の境内でかくれんぼなんかもしましたね。夕方になると夕食の匂いが庭にも香ってきて、「今夜はカレーだ!」なんていう少年時代が僕にとっての「懐かしさ」です。
クライアントさんの懐かしさと僕の懐かしさが同調すればよいのですが、都会で育った場合、海のある街で育った場合では懐かしさのニュアンスが少し違ってくると思います。田んぼの匂いや夕暮れ時に漂う香りも間違いなく違うでしょう。このように育った環境によって「懐かしい」のニュアンスは違いますから、どんな懐かしさなのか?を確認してすり合わせることが大事になってきます。
グラフィックの世界はもっと大変じゃないかと思う(想像)
「もっと赤くして!」と言われた時、どの程度赤くするのか?明るさは?黄色がかった赤?茶色っぽく?などなど、色のほうがニュアンスのすり合わせが難しいのではないかと勝手に思っています。
そもそも、同じ色を同時に見ていたとしても同じように見えるのか?という疑問を小さい頃から持っていました。確かめるすべがあるのでしょうか?
何にせよ、クリエイティブな世界ではジャンルを問わず、人によっての捉え方の違いが存在します。人と人で作る以上、その違いをする合わせる必要性があるのではないかと思います。
当たり前だと思わず確認をする
以上のことから人と自分の感覚は違っていて当たり前だと思い、ニュアンスを確認することが大事になってきます。駆け出しの頃はニュアンスの確認をせず作業をして、全部手直しという事を繰り返してきました。もちろんそれがあるから今があるわけですが、確認作業は駆け出しかベテランかは関係なく、クリエイターとして一生付いて回る問題だと思います。ですので、確認グセを早くからつけていくことをおすすめします。
これは、仕事だけでなく、家族・友人・恋人・夫婦など、人間関係全てにおいて、相手と自分の認識の違いが存在します。確認をするだけで無駄な摩擦も減ると思います。スキルアップも兼ねて認識の違いを自覚し、確認・対応というサイクルを自然体で回して行けたら良いですね。
それでは!
À bientôt.