連日コーライティングについて書いていますが「経験していないことに向けての準備」というわけで、やはり自分ひとりの曲作りとは勝手が違います。ですので色々シミュレーションしておきたくなるわけです。
今回は「クライアント案件のインスト曲を、初めて合う人達同士でコーライティング」というケースでシミュレートして見ようと思います。
コーライティング作業の進め方
コーライティングを始めるにあたり必要となる作業と、その流れを整理してみました。
- クライアントからヒアリング
- 作る曲のイメージ(世界観)の共有
- 曲のテンポ・構成などを決める
- 役割分担
- どのパートから作りはじめるのかを決める
1.クライアントからヒアリング
クライアント案件の場合、先方から曲調や方向性などをヒアリングします。これはディレクターが担当します。
この時にリファレンスを出してくる方もいます。Youtubeのリンクや参考曲を送ってくださる方もいます。その逆で、イメージを言葉だけで伝えてくる方もいれば、おまかせします!という一言に対応するケースもあります。
大事なのは「どんな風にしたいのか」を聞き出すことなのです。先方が言葉や参考資料では伝えきれない部分をいかにキャッチできるかがポイントです。
合わせてスケジュールも確認します。一人の時よりも余裕を持ったスケジュールを組む必要があります。
2.作る曲のイメージ(世界観)の共有
その結果をチームに共有するのですが、はじめましての方達にイメージをどう共有するのかは「集まった人による」ので方法はわかりません。具体的にリファレンスを出したほうが良い人もいれば、リファレンスはいらない人もいます。集まった人達によって臨機応変に対応する必要があります。
そして「イメージ(世界観)」と言ってもその中には色々なものが含まれてます。
- テンポ感
- 構成
- 明るい・暗い
- 派手・落ち着いている
- 変化の有無
- 音の厚み
- 音圧感
テンポ感とテンポは別物です。テンポ120BPMでも16部音符を多用すれば240BPMっぽく聴こえます。実際のテンポと音符の詰め込み方を確認する必要があります。
明るい・暗いはコード感ですが、暗いけど派手にすることもできますし、明るくて落ち着いている感じもだせます。この部分も共有しておかないと作業内容と作業量が大きく変わってきます。
変化の有無があったほうが良いのか、それとも変化をつけずに勢いよく走り抜けたいのかでトラックメイキングが変わってきます。一番土台となる部分なので変化の有無は要確認です。
音の厚みと音圧感は似て非なるもので、音の厚み=楽器の重ね方、音圧感=ミックスの処理と解釈しても良いかもしれません。音圧を出したい場合は楽器の重ね方を工夫しないと音圧が出ません。
3.曲のテンポ・構成などを決める
イメージを共有する中でテンポや構成も自ずと見えて来るのですが、それぞれが異なる環境で作業をすすめる上で問題となってくるのが「DAWの違い」です。
チーム全員が同じDAWならばSessionファイルを回していけば良いのですが、DAWが違う場合や並行して作業するケースもあると思います。その時に必要になってくるのが「テンポマップ」です。
テンポとマーカーをスタンダードMIDIファイルで共有すれば別々に同時に作業をすすめることができます。これもディレクターの役割です。
4.役割分担
ビートメイカーとアレンジャーは兼用なのか、トップライナーは一人なのかパート(A,B,サビ)ごとに分けるのかなど、お互いがお互いの適性を見ながら役割分担を決めていきます。
この時に自分の特性を自己評価してもらいますが、過去作品をきかせ合い「他己評価」をし合うのも面白いのではないかと思っています。他人から見た自分を客観的に見れる効果は今後にも役に立つのと、パーソナルな部分をシェアし合うことでの「共感」効果を期待できます。
その場合注意しなければならいのは「皆が皆シェアをしたいわけではない」という点です。中には自分のことをさらけ出したくない人もいます。評価を嫌う人もいます。集まったメンバーによって臨機応変に対応する必要があります。
5.どのパートから作りはじめるのかを決める
リズムトラックをラフで作り、オーディオ化してシェアするやり方もあれば、メロディラインと簡単なコードを作りMIDIデータでシェアするやり方もあります。
曲の方向性と集まったメンバーによって「最初の一手」は変わってきます。毎回顔を合わせているメンバーなら「じゃあ、いつもの感じで進めましょう!」となりますが、始めての人たち同士の場合は手探りになるのではと思います。
コーライティングを経験したメンバーがいれば意見をもらって進めても良いでしょうし、なかなか決まらない場合はディレクターが決めなければいけません。何にしても一番ドキドキする場面だと思っています。
あくまでもシミュレーション、実際は臨機応変に
振り返ると、どのプロセスでもポイントになってくるのは臨機応変ですね。自分のシミュレーション通りに行かない時は臨機応変に対応することが重要です。むしろシミュレーション通りに行くはずがありません。
逆に思い通りに行かないことをどれだけ楽しめるかがコーライティングの醍醐味なのではないかと思います。
それでは!
À bientôt.