スケールを勉強してわかってきたこと〜なぜ世界中で同じスケールが使われるのか?

ほんとに今更ですが、スケールの勉強をしています。理解が進みその歴史にも興味が湧いてきました。そして、欧米とアジアで同じスケールが使われていることもわかりました。地理的に離れているにも関わらず、なぜ同じスケールが使われているのかを考えてみます。

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マイナースケール

これが欧米でお飲み使われているマイナースケール。全てではありませんが代表的なスケールで、今のポップスでもおなじみのスケールです。

スケール名音度記号
ドリアン1 2 3b 4 5 6 7b
フリジアン1 2b 3b 4 5 6b 7b
エオリアン1 2 3b 4 5 6b 7b
ロクリアン1 2b 3b 4 5b 6b 7b
マイナーペンタトニック1 3b 4 5 7b

そしてこちらがアジアのマイナースケール。

スケール名音度記号同一のスケール
カーフィー・タート1 2 3b 4 5 6 7bドリアン・スケールと同一のスケールインド
バイラヴィ・タート1 2b 3b 4 5 6b 7bフリジアン・スケールと同一のスケールインド
アサーワリー・タート1 2 3b 4 5 6b 7bエオリアンと同一のスケールインド
羽調式1 3b 4 5 7bマイナー・ペンタトニック・スケールと同一のスケール中国
ニロ抜き短音階1 3b 4 5 7bマイナー・ペンタトニック・スケールと同一のスケール日本

メジャースケール

メジャースケールも同様、欧米とアジアで同じ音階が使われています。

スケール名音度記号備考
イオニアン1 2 3 4 5 6 7メジャー・スケール
リディアン1 2 3 4# 5 6 7
ミクソリディアン1 2 3 4 5 6 7b
メジャーペンタトニック1 2 3 5 6
スパニッシュ1 2b 3 4 5 6b 7b
マカーム・ヒジャーズカル1 2b 3 4 5 6b 7ジプシー・スケールと同一のスケール
ジプシー1 2b 3 4 5 6b 7

こちらがアジアのメジャースケール

スケール名音度記号同一のスケール
ビラーヴァル・タート1 2 3 4 5 6 7イオニアンと同一のスケールインド
カリヤーン・タート1 2 3 4# 5 6 7リディアン・スケールと同一のスケールインド
カマージ・タート1 2 3 4 5 6 7bミクソリディアン・スケールと同一のスケールインド
宮調式1 2 3 5 6メジャー・ペンタトニック・スケールと同一のスケール中国
呂旋法・旋律法1 2 3 5 6メジャー・ペンタトニック・スケールと同一のスケール日本、雅楽
ヨナ抜き長音階1 2 3 5 6呂旋法と同一のスケールメジャー・ペンタトニック・スケールと同一のスケール日本、明治以降

なぜ同じスケールが世界中にあるのか

移動型民族との関連性

なぜ世界各地で共通するスケールが存在しているのか。それは移動型民族「ジプシー」と関係があるのではないかと思います。そもそもジプシーとは、ヨーロッパで生活していた移動型の民族で、エジプトからやってきた人を意味するエジプシャンの頭音が無くなりジプシーと呼ばれたという説があります。

移動型民族なので元々エジプトにいたのか、はたまたその前には別の土地にいて、エジプトに移動してきたのかはわかりませんが、移動型の民族は同時に文化なども運んで来ます。ジプシーの種類として

  • 北インド・パキスタンに起源を持つインド・アーリア人系のロマ
  • 19世紀に現代のルーマニアに当たる地域で奴隷とされたロマニ系のロミ
  • 中東のイスラム圏に居住するインド・アーリア人系のドム
  • 中央アジア及びロシアに居住するドムの集団リューリ
  • インドおよびパキスタン各地に居住するバンジャラ
  • スリランカに居住するスリランカジプシー
  • 起源が全くわからないイニシェ
  • アイルランドの漂泊民アイリッシュトラベラー
  • スコットランドのスコティッシュトラベラー

これらジプシーが、移動した先の土地の民族と交わっていったことは想像に難くありません。そうして文化の融合が起こります。また、ジプシーの起源がインドとする説もあり、そこから照らし合わせると、インドのスケールとヨーロッパのスケールが類似するというのも不思議な話ではなくなります。

インドが起源とされるジプシーの移動経路

出典:World Performing Blog

吟遊詩人との関連性

その昔、ヨーロッパには吟遊詩人という人達がいました。吟遊詩人とは、

・諸国を旅したり、有力者に仕えたりしながら詩や音楽を創作・演奏する。 
・「宮廷歌人」と「楽師・芸人」とに分類できるが、実際には身分も社会階層もさまざま。 
・15、16世紀頃から次第に「音楽家」「芸術家」などの階層化が進んだ。

吟遊詩人はリュートホーンパイプなどの楽器を奏でながら音楽や物語を吟唱する職業です。彼らの奏でる詩や物語には、伝説の英雄(ロランなど)にまつわる武勲詩、貴婦人への愛、アーサー王をはじめとする騎士道物語などさまざまな種類がありました。

吟遊詩人には諸国を旅する者もいれば、王侯貴族ら権力者に仕える者もいます。その特徴から、以下のようなふたつのグループに分けられます。 

・宮廷歌人……トルバドゥール、トルヴェール、ミンネジンガーなどと呼ばれる人々。有力者に仕え、詩歌を提供する。高貴な出自の者も多かった。

・楽師・芸人……ジョングルール、ミンストレルなどと呼ばれる人々。宮廷歌人に仕えたり、旅芸人として諸国を放浪したりしながら歌唱や演奏を行った。不名誉な存在とされていた。

しかし実際には、全ての吟遊詩人がこのどちらかのグループにはっきり分類できたわけではありません。彼らの出自や社会階層はさまざまで、地域や時代によっても違いがみられます。 

出典:Phanta Porta

吟遊詩人にはどんな人がいたのかというと、

*トルバドール Troubadour

12,3世紀ごろの中世はヨーロッパ。スペインに近いポワチエやトゥールーズから地中海に面するカタロニア、プロヴァンスまでの南フランスで、そのころ使われていたオック語で作詞した吟遊詩人。地中海的性格にイスラムの異教の影響が加わり、美と情熱にあふれる世界を展開しました。
「アンジェリク」(ゴロン夫妻)のトゥールーズ伯爵ジョフレはこの遺産が残る環境で成長したのですね。 

*トルヴェール Trouvere

トルバドールの影響を受けて、こちらは北フランスのオイル語で作詞した北フランスの吟遊詩人。有名なクレチアン・ド・トロワの「アーサー王伝説」や「パルシヴァル」「トリスタンとイゾルデ」など、中世騎士物語を題材に「宮廷風恋愛」が花ひらきました。

*ミンネジンガー Minnesaenger

ドイツの伝説や英雄の物語を歌った吟遊詩人。「ニーベルンゲンの歌」が有名ですが、ほかにも「グードルーン」とか「デートリヒ・フォン・ベルン」とかある。騎士たちのミンネジンガーのあと、ドイツでは15世紀ごろに職人たちが「詩人組合」を作って、だれが一番(マイスタージンガー)かニュールンベルクでコンクールをやってたらしい。靴屋の親方ハンス・ザックスが優勝したらしいが、よく知らない。ワグナーは苦手なので。

*スカールド

ノルウェーやアイスランドのバイキングの吟遊詩人。特定の王様と行動をともにし、その業績を即興に歌うことを仕事とした。高貴な身分の出で、武芸にもひいで、戦場では王を守る親衛兵となった。なんだか戦国時代のお小姓を思い出してしまう。小姓は殿を命をかけて守るものです。森蘭丸は歌わなかったかもしれないが、松尾芭蕉は伊賀の若殿のお小姓でした。

*バード Bard

吟遊詩人の老舗、アイルランド・ケルトでは吟遊詩人をこう呼ぶらしい。
バードといえば「風の呪歌(ガルドル)」(あしばゆうほ 秋田書店刊)です!「クリスタル・ドラゴン」もケルト伝説をもとにファンタジーの美しさに歴史のリアリティを織り込んだ傑作ですが、番外編の「風の呪歌」は吟遊詩人が出てきて、どうも、あの作品が私はものすごく好きなのです。
ちなみに the Bard of Avon エーヴォンの詩人とはシェイクスピアのことです。

*琵琶法師 Biwa-hoshi

祇園精舎の鐘の音~と「平家物語」を語って歩いた盲目の旅法師。
琵琶もリュートの親戚です。

出典:吟遊詩人のおはなし

音楽の流通に濃く関与していたのは、この吟遊詩人によるものだとも思われます。そして、権力者に仕えたならその人を喜ばすための「手法」を磨いていったのではないかと思います。僕らがヒット曲を生み出そうと試行錯誤するのと同じで、何らかの「コツ」みたいなものを試行錯誤し、やがてそれが方法論や理論となり「この王様はこの音の並びが好まれる」となり、後にスケールとなったのではないかと想像します。

戦争との関連性

世界史は戦争史とも言えるくらい、世界各地で侵略が繰り返されてきました。侵略をすることで文化と文化が交わり、新しい文化が生まれてきました。そういった融合の中で音楽も進化・発展してきたと思われます。

侵略した相手の文化を取り入れる中で、優れた理論や手法も取り込み融合させていったことは想像に難くないですね。新たな国土を支配すると、音楽も国土に根付いてゆきます。そしてまた侵略という流れのなかで同じスケールが定着したのではないかと想像します。

これらのスケールをどう組み合わせるか

こうして長い年月をかけて融合した後に現在も残っているスケールを、自分はどう使っていくのかを毎日考えています。米津玄師さんの曲をアナライズしてみたところ、普通では組み合わせないようなスケールの組み合わせを使って個性を出しています。自分なりの使い方をマスターしてみたいですね。

それでは!

À bientôt.

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